皆さん、ご入学おめでとうございます。
こうして皆さんを無事お迎えできたことを、嬉しく思います。また、ご来学くださいました保護者の皆様に、感謝とお祝いを申し上げます。
皆さんは、約三年間にわたるコロナ禍のために、学校行事や活動が制限され、数々の残念な思いをされてきたことと思います。
聖和学園短期大学は、2020年の六月から、対面授業の再開に踏みきりました。2021年度からは、原則対面で授業を行っています。昨年度、2022年度も同様です。もちろん、状況によって、授業を部分的にオンラインに切り替えたり、短大での活動に制限をかけざるを得なかったりした時期もありましたが、教育の根幹は対面での学びにあるという理念を崩すことなく、活動を続けてきました。幸い本学では、大きな学内感染を引き起こすことはありませんでした。学生の皆さんや教職員が、細心の注意を払ってきたことによるものです。今年度からは、さまざまな活動を、より活発に行ってもらえるのではないかと期待しています。
さて、本学は、昭和二十六年に開学いたしました。今年は創立七十ニ年となります。この間、一万四千名を超える方々が、本学を卒業され、さまざまな場所で活躍していらっしゃいます。卒業とともに「学位」が授与されますが、これは国際的に認められている「短期大学士」という学位です。
本学の建学の精神は、仏教の教えに基づく教育です。仏教系の大学の多くが、いずれかの宗派に属しているのに対し、本学は、いずれの宗派にも属しません。自分と他者を大切に慈しむ「慈悲」と、支えあい協力し合う「和」の心を身につけ、「智慧」を学ぶ人間教育を通して、地域社会に貢献する有能な人材を育てること、これを建学の精神としています。
聖和学園短期大学での学びを、「幸せや困りごとのすぐ近くにいられるように」と表現した学生さんがいたそうです。そういえば、本学には「奉仕」の気持ち、人の役に立ちたいという思いを持って学んでいる学生さんがとても多いと感じます。人の「幸せや困りごと」に寄り添う感性を持ち、そのための知識や技術を磨くことは、まさに、「慈悲」と「和」、「智慧」を大切にする建学の精神を具現化するものではないでしょうか。ガイダンスに続いて、来週から新学期の授業が始まりますが、「人間と仏教」の授業などを通して、建学の精神についても、これからより深く学んでいくことになるでしょう。
詩人の長田弘は、「なくてはならないもの」という詩の中で、「平和とは(平凡きわまりない)一日のことだ」と記しています。コロナ禍のみならず、非常に不安定な、現在の世界情勢を思うと、「平凡きわまりない一日」を、大切に、丁寧に生きていくことの重要性をあらためて考えさせられます。若い皆さんには、ぜひこれからの二年間の日一日を、大切に、丁寧に過ごしていただきたいと思います。
これまで皆さんは、小学生の時は「児童」、中学・高校では「生徒」と呼ばれてきました。今日からは「学生」「短大の学生」と呼ばれ方が変わるのです。「学生」という呼び方は、自立した大人(おとな)に近づいたことを意味します。ともに学ぶ仲間はもちろん、皆さんを支えてくださるご家族や、本学の教職員に対して、敬意をもって接しましょう。そして、自分自身を見つめ、二年後に社会人として出発するための知識と技術を身につけ、感性を磨いて頂きたいと切望します。
健康で充実した二年間になることを祈って、皆さんをお迎えする「式辞」といたします。
令和五年四月四日
聖和学園短期大学 学長 吉川 和夫